扶餘のイヤギ
「赤ん坊になったお爺さん」 皐蘭薬水(コランヤクス:고란약수)の伝説
大昔、扶餘がまだ「所夫里(ソブリ)」と呼ばれていた頃、ある村に人もうらやむほど仲の良い老夫婦が暮らしていた。ふたりは子宝に恵まれず、戻らない歳月を嘆いていた。
そんなある日、お婆さんの夢の中に日山(錦城山)で修行をしている道士が現れ、「扶蘇山の川岸(現在の皐蘭寺)の岩にある皐蘭草の柔らかな露と、岩から湧き出す強い水、すなわち強柔をあわせもった陰陽薬水が若返り効果がある」と伝えた。
お婆さんは喜び、夜明けを待ってお爺さんにその薬水を飲んでくるようにと送り出したが、お爺さんは夜になっても帰ってこなかった。不安な一夜を過ごしたお婆さんが翌日、薬水場に言ってみたところ、どうしたことか赤ん坊がお爺さんの服の中で泣いているではないか。道士が「薬水は一杯飲むごとに三歳若返る」と言ったのを、お爺さんに伝えるのを忘れてしまったのだ。
お婆さんは後悔しながらもこの赤ん坊を家に連れ帰り一生懸命に育てた。後にこの赤ん坊は立派に育って国に大きな功績を立て、百済時代の最高官職「佐平」にまで出世したという。
(2011年10月1日掲載)